スポーツ活動における熱中症事故の防止について

  • 発行元:スポーツ庁/公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)
  • 通知日:令和8年4月28日(スポーツ庁)/令和8年5月13日(JSPO)
  • 対象:加盟・登録団体、指導者、大会主催者、選手、保護者、審判等すべての関係者

はじめに

スポーツ活動中の熱中症事故は依然として多く発生しています。

  • 令和7年の夏は観測史上最高の平均気温を記録し、8月には国内史上最高となる41.8℃を観測
  • 令和7年5月〜9月の熱中症による救急搬送人員は100,510人と、調査開始以来最多を記録

これを受けて令和7年6月、JSPO「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」が改訂され、身体冷却が新たに予防5ヶ条に盛り込まれました。そして令和8年1月には、スポーツ庁より「運動・スポーツにおける安全対策の評価・改善のためのガイドライン(試行版)」が公表されています。

卓球は屋内競技ですが、夏季の体育館は高温多湿になりやすく、十分な対策が必要です。本協会の大会・練習・講習会等においても、以下の事項を踏まえて適切に対応してください。

重点的に取り組むべき5つの事項

熱中症を予防するため、以下の5つの事項について、重点的に取り組むことが呼びかけられています。

暑熱順化(体を暑さに慣らす)

体が暑さに慣れていない状態で、急に気温の高い環境に出ると、熱中症のリスクが一気に高まります。5〜6月の、気温が上がり始める時期から、無理のない範囲で汗をかく習慣をつくっておきましょう。

暑熱順化の効果が表れるまでには、トレーニング開始からおよそ5日ほどかかります。 合宿の初日や長い休み明け、そして低学年の子どもたち(特に新入生)は、体が暑さに慣れていないことが多いため、注意してください。

汗の蒸発を妨げない、風通しのよい素材を使用したウェアを選び、体温の上昇を防ぎましょう

暑さ指数(WBGT)に基づく活動判断

活動場所のWBGTを継続的に測定し、以下の基準を参考に、判断してください。

WBGT気温の目安判断対応
31以上35℃以上運動は原則中止特に子どもは中止すべき
28以上31℃以上厳重警戒激しい運動は中止、10〜20分おきに休憩、水分・塩分補給
25以上28℃以上警戒積極的に休憩、激しい運動は30分おきに休憩
21以上24℃以上注意積極的に水分・塩分補給
21未満ほぼ安全適宜水分・塩分補給
注意

判断はWBGTで行うことが望ましいですが、気温で判断する場合は湿度にも留意が必要です。湿度が高い場合は1つ上の対応が必要になります。

参考:環境省「熱中症予防情報サイト」 https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.php

健康チェックと水分・塩分補給/身体冷却

運動中の体は、自分が思っている以上に水分が失われています。水分と塩分補給をこまめに行いましょう。

水分・塩分補給の目安

活動の前後で体重を測っておくと、自分の体からどれだけ水分が抜けたのかを客観的に知ることができます。

目安としては、体重の2%以内

2%を越えると、パフォーマンスの低下だけでなく、安全面にも影響がでてきます。

反対に、活動後に体重が増えているようであれば飲みすぎです。

水分補給は「足りない」だけでなく「多すぎる」ことにも注意してください。

  • 尿の色が濃い
  • 激しい喉の渇き

これらを感じている時は、体が水分を必用としているサイン。このような時は、特に意識して水分補給をしっかり行いましょう。

身体を冷やすための工夫

運動中の体温は、気温や日差しだけでなく、活動によっても上昇します。そのため、水分補給と合わせて、体を上手に冷やす工夫が大切です。

外部冷却

体を外側から冷やします。

アイスタオルを首に当てたり、風邪を送って体の熱を逃がしたり。手のひらを冷やす「手掌冷却」や、クーリングベストなども、体温の上昇を抑えるのに役立ちます。

内部冷却

体を内側から冷やします。

水分補給はもちろんですが、細かい氷の粒が混ざった「アイススラリー」を取り入れると、体の深部から効率よく熱を下げられます。

熱中症が疑われるときの早めの対応

活動中に「いつもと違う様子」が見られたら、迷わず熱中症の可能性を考えてください。

  • ふらつき
  • 動きが鈍い
  • 返事が遅い
  • 顔色が悪い

こういった症状が見られたら、体が限界に近づいているサインです。

まず涼しい場所に移動し、水分と塩分を補いながら、できるだけ早く体を冷やしてください。

特に首や脇の下、太ももの付け根など、太い血管が通る部分を冷やすと効果的です。必要に応じて、ためらわずに医療機関への搬送を判断してください

熱中症警戒情報への注意

特に暑い日は、環境省から「熱中症警戒アラート」が発表されます。

熱中症警戒アラート

前日の夕方(17時頃)と当日の早朝(5時頃)に、その地域で熱中症の危険が高まると予測された場合に発表されます。

熱中症特別警戒アラート

過去に例のないほど危険な暑さが予想され、大量の救急搬送が懸念されるとき場合に発表されます。

こうした警戒情報が出ているときに活動を行う場合は、普段以上に慎重な判断が必要です。

エアコンのある屋内や屋根付きの運動場など、できる限り涼しい環境を確保し、外での活動を避けたり、時間を短くしたりするなど、柔軟に対応していきましょう。

大会・イベント主催者向けの留意事項

大会やイベントを安全に運営するためには、参加者の体調管理だけでなく、主催者側の判断や準備がとても大切です。特に暑さが厳しい時期には、開催そのものをどうするか、慎重な検討が必要になる場面もあるでしょう。

開催時期や時間の設定

WBGT が 31 を超えるような状況が連日続く場合、通常どおりの開催が難しくなることがあります。

熱中症のリスクが高いと判断されるときには、思い切って開催時期をずらしたり、朝や夕方など比較的涼しい時間帯に変更したりすることも、安全を守るための大切な選択になります。

中止・延期の判断基準

「WBGT をどのように測定し、誰が最終判断を行うのか」

基準をあらかじめ明確にしておけば、当日の混乱を防げます。大会期間中は、会場で暑さ指数を継続的に計測し、関係者全員で情報を共有していくことが求められます。

競技ルールの工夫

  • プレー時間の短縮
  • クーリングタイムの設定

いろいろと工夫できることはあります。

選手だけでなく、審判も同じように熱中症のリスクがあります。審判への配慮も忘れずに行いたいところです。

会場環境の整備

参加者や審判、大会関係者、来場者がいつでも水分や塩分を補給でき、体を冷やせる場所を確保しておきましょう。

どのような方法で水分補給や身体冷却を行うと効果的なのか、事前に周知しておくと、より安全な大会運営につながります。

万が一、熱中症が発生した場合には、すぐに適切な応急対応ができるよう、救護体制を整えておきます。 迅速な判断と行動が、参加者の安全を守るために大切です。

熱中症が発生した場合の応急対応

暑い時期の運動中、いつもと違う様子が見られたときは、「熱射病ではないか」を確認することを、まず行いましょう。熱射病の特徴は高体温と意識障害です。

熱射病(重症)— 死の危険が迫る緊急疾患

熱射病は、熱中症の中でも最も重い状態で、命に関わる緊急の疾患です。

特徴

40℃を超える高い体温と、意識の異常

呼びかけに対する反応が鈍かったり、言動がおかしかったり、あるいは意識がもうろうとしている場合は、迷わず重症と判断してください。

対応

119番通報と同時に、現場でできる限りの冷却を始めます。後遺症を防ぎ、命を守ります。

高体温の状態を長く放置すると危険が増すので、30分以内に40℃以下の状態に戻すことを目標に冷却します。

冷却方法

効果的なものから順に並べると

  1. 首から下の全身を氷水や冷水に浸ける
  2. 冷たい水道水を全身にかけ続ける
  3. 氷水に浸した濡れタオルを当て、風を送る
  4. 全身に氷嚢やアイスパックを当てる

軽い症状であっても、無理をしてその日の活動に戻ることは避けてください。 たとえ症状が改善したように見えても、体の内部ではまだダメージが残っていることがあります。

少なくとも翌日まではしっかりと経過を観察し、体調が完全に戻るまでは運動を控えることが大切です。

熱疲労

強い暑さの中で運動を続けていると、体の水分や塩分が失われ、全身のだるさや力の入りにくさ、めまい、吐き気、頭痛といった症状が現れることがあります。

これが「熱疲労」です。

必ずしも体温が高くなるとは限らず、気づきにくいこともあります。

このような様子が見られたときは、まず涼しい場所に移動し、衣服をゆるめて体を休ませます。体温が上がっているようなら、冷やすことも大切。安静にしながら、水分と塩分をしっかり補えば、回復に向かうことがほとんどです。

熱けいれん(運動誘発性筋けいれん)

大量に汗をかいたあと、水だけを飲んで塩分を摂らないでいると、手足や腹部の筋肉がつったり、強い筋肉痛が起きたりすることがあります。

これが「熱けいれん」です。運動中に突然起こるため、本人も周囲も驚くことが多い症状です。

症状が出たときは、いったんプレーから離れ、つっている部分をゆっくり伸ばして筋肉を落ち着かせます。ストレッチをしながら、塩分を含む飲料を補給することで改善が期待できます。

熱失神

強い暑さの中で立ち続けたり、急に動いたりすると、血圧が下がってめまいがしたり、意識を失って倒れてしまうことがあります。

これが「熱失神」です。周囲が気づいて支えてあげることが、まず大切になります。

対応としては、涼しい場所に移動し、横になって休ませます。脚を少し高くすると血流が戻りやすく、回復を助けます。落ち着いてから水分を補給し、しばらく安静にして様子を見守ります。

指導者・主催者の法的責任について

スポーツ活動中の熱中症死亡事故は、適切な予防措置を講ずれば防げます。ゆえに、事故が発生した場合、民事責任(損害賠償責任)や刑事責任を指導者等の個人または法人が問われることになります。

【参考事例】

ある少年野球チームで、試合に負けた罰として選手に投げ込みやダッシュを課したところ、選手が練習開始3時間後に倒れ翌日死亡。総監督は民事責任で賠償金約5,000万円で和解しました

出典:JSPO「スポーツリスクマネジメントの実践」

熱中症の予防方法と発生時の応急処置を、指導者は必ず身につけておきましょう。

JSPO(日本スポーツ協会)の対応方針について

JSPOは、開催事業において以下の方針で対応しています。本協会の大会運営・活動でも参考としてください。

  1. WBGT31℃以上の場合、スポーツ活動を原則中止(特に子ども・高齢者の場合は中止すべき)。
  2. 暑熱環境下で活動を実施する場合の対策:
    • 競技ルールや慣例にとらわれず、参加者の休憩時間(水分補給・身体冷却)を設定
    • 環境条件に応じた活動時間の調整(時間帯変更、活動時間短縮など)
    • 参加者が積極的に身体冷却を行える環境整備(複数の冷却方法を準備)
    • 参加者の体調チェックを毎日実施し、体調不良者はその日の活動を中止
    • 救急体制の構築、医師または看護師の常駐、熱中症に特化した対応(救急車要請⇒涼しい場所への避難⇒身体冷却)の準備
  3. WBGTに基づくスポーツ活動実施の可否判断フローを取り決め、参加者へ事前周知(環境条件により中止の可能性があることを事前に伝える)。

静岡県卓球協会からのお願い

静岡県卓球協会では、選手・指導者・審判・保護者の皆さまが安全に活動できるよう、熱中症対策の徹底をお願いしています。 本協会が主催・共催する大会や講習会、そして加盟団体の練習においても、これまでご案内してきた内容を踏まえ、日頃から十分な対策を講じていただければ幸いです。

監督会議や審判講習会、保護者向けの説明会などは、熱中症予防を周知する絶好の機会です。選手だけでなく、指導者や保護者の皆さまにも正しい知識を共有し、チーム全体で安全を守る意識を高めていきましょう。

体育館は屋内ですが、夏季は高温多湿となるため、WBGTの測定と適切な判断が不可欠です。エアコン設備の活用、休憩時間の確保、身体冷却用具の準備にご協力ください。

選手の健康と安全を守るため、皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

参考資料・リンク集

スポーツ庁

環境省

公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)

独立行政法人日本スポーツ振興センター

公益財団法人スポーツ安全協会

本件担当